もう一人は趣味の世界で、レイモンド・チャンドラー。ハードボイルド小説の大家で、学生時代ほぼすべての著作を読みふけったものです。そしてこの度、NHKでその代表作を原作としたドラマが放映されています。ドラマ名は「ロング・グッドバイ」、原作名は「The Long Goodbye」、邦題では「長いお別れ」となっています。
チャンドラーファンとしてはもちろん見逃せないわけで、きちんと録画して後日観ています(放映時間にはまず寝ているので)。全5回のうちこの日第2回まで観ましたが、場所は日本で出演も日本人ですが結構原作に忠実で、あらすじや細かいところまで原作を知る者にとってはかなり楽しめます。
一つ面白かった例を挙げると、Zという頭文字の医者を捜してくれという依頼が主人公の探偵にあります。原作ではV医師なのですが、なぜ脚本でZになったのかということがよくわかりました(日本人で頭文字がVというのはあり得ないということもありますが)。
結局探し当てた探偵とのやりとりで、「やはり財前先生だったのですね」という依頼主の言葉に対し、「なぜ名前を知っているのですか」と聞き返すと、戸惑いながら「だって医者でZと言えば財前かと思いました」と答えていました。これは明らかに「白い巨塔」の主人公を表しているもので、まず日本人にしかわからない脚本だと思いました。
かなり硬派で暗いイメージのあるドラマなのでどこまで視聴率がとれるかはわかりませんが、私のようなこうしたジャンルのコアなファンにとっては嬉しい限りです。原作が秀逸なのでドラマに先回りして読みたい方はどうぞお勧めします。この文庫本の奥付を見ると昭和61年とありました。それでも第29刷です。名作ですね。