鶏舎とテラス下の運動場は分かれており、いつもその境の扉を朝に開放し、夕方には閉めています。理由は、鶏舎は金網で覆われていますが、テラス下はナイロンのネットなので夜中に獣が破って入ってくる可能性があるからです。いつもは皆を鶏舎に集めるために、夕方には大好きな配合飼料を鶏舎の餌台にやっています。そしてちゃんと全員いるかと点呼をとることはできないので、餌を食べる姿を上から数えています。
ところがこの二日前は、何度数えても11羽しかいません。おかしいなとテラス下を覗いてみると、一羽が動かずに固まっています。以前ご近所の方から似たような話を聞いていたので、しかたがないな、いつ鶏舎の止まり木に戻るかわからないから扉は開けておこうということになりました。万が一獣に襲われたら騒ぐので、すぐに気付いて駆け付けられるだろうと。
翌朝、何もありませんでしたが相変わらず一羽は同じ場所に固まったままです。時々しゃがんでいるので生きているかなと棒で突くと、一応動きます。しかしそこからまったく移動しようとしません。ですから餌も水も口にせず、そのまま一日が過ぎました。また扉を開けたまま一夜を過ごすことにし、そのうち元気になるかなとくらいにしか思っていませんでした。
そしてこの日の朝見てみると、亡くなっていました。それまでしゃがんではいても垂直になっていたものが、横に倒れて脚をこちらに向けていました。棒で突いても何も動きません。タイミングの悪いことに、この日は私が早朝から東京に仕事に出かけることになっており、何しろ時間がありません。急いでテラス下に潜り込んで引きずり出し、敷地の片隅に深い穴を掘って埋めました。上にはこんもり土を盛り、目印を立て、映画「七人の侍」のラストシーンのようなお墓を作りました。

この前の日の夕方に撮った最後の姿がこれです。ほかの皆はすっかり鶏舎に帰っているのに、一羽だけこの通りでした。原因はまったくわかりません。外傷もなく、それからいろいろ調べましたが病気の症状のような、例えば羽根のツヤがなかったりトサカの色が変わっていたり尾の羽根が垂れていたりなどなく、見た目は健康体そのものです。ただ違うのは、目を閉じて動かなくて身体が硬くなっていたことでした。
生まれた日にヒヨコを買ってきてから大事に大事に育ててきたので、たかが鶏、しかも12羽もいるうちの一羽とはいえ、その喪失感は意外なものでした。これがもっと愛くるしい犬などであれば、そのペットロス感は相当なものだろうと想像できます。実際、移住してきた際にご近所で飼っていた愛犬が4匹亡くなっていますが、すべての家でその後新しい犬は飼っていません。
それにしても私たちなりには良い人生ならぬ鶏生を送ったのではないかと考えています。同じ日に生まれたヒヨコでも、その大多数はケージ飼いで身動きもとれず、ただ餌を食べて卵を産むだけの毎日の中、うちの鶏たちはいつも元気に走り回り、無農薬の野菜や虫など自然のものをふんだんに食べ、卵も毎日ではなく2日か3日に1個産むというのんびりとした生活です。もし人間のように同期会などがあったりしたら、「お前のとこ、どうよ」「うちは結構いいよ」という会話になっていたかもしれません。
この日の東京の仕事は午前中だけでしたので夕方には帰ってきたのですが、当たり前ですが何度数えても11羽しかいない。妻といつもの晩酌を終えた後ですが、一人で赤ワインをがぶ飲みしても全然酔えない。そのような中でこのブログを書いています。
posted by bourbon_ueda at 00:00
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